酒の失敗談・一声吠えてもいいですか?

酒の失敗談・一声吠えてもいいですか?

Feb 5, 2020

話は12月31日、大晦日までさかのぼります。

柿市[青果分門]ではお客様への最終配送を済ませて朝一から大掃除が始まっています。

酒屋はと申しますと、毎年この日は店を閉めて地獄の棚卸をしなければならんことに決まっています。掃除を終えたみんなが「良いお年を~」と満面の笑みで帰っていく中、2000本以上の酒類、カートン類、店内すべての在庫を一つ一つ数えていきます。昼ごはんを食べる余裕もなく延々と続くこの作業は、私にとって一年で最も辛く悲しい時間です。
毎年のこの苦行を何としても改善しなければと思い、一週間ほど前からお客様のいない時間に一人黙々と在庫を取り続けました。そのおかげでなんと初めて午前のうちに在庫を取り終えることに成功しました。これは本当に快挙です。

在庫との戦いを終えた後には、兄夫婦や姉、母たちと3F食堂で軽く打ち上がるのも毎年恒例です。苦しみの後のご褒美は何物にも代えがたい幸せです。
ですが、ここで私が欲を出して(一旦自宅に帰って車を置いてこよう)と考えたことでトラブルに巻き込まれてしまいました。

自宅では[おせち]の注文管理を任せられているダンナの携帯に、頼んだ[おせち]がまだ届かないと苦情の電話が入っています。それに重なるように今度は、支払い済みの[おせち]代金を二重に支払ってしまったとの電話が。・・・携帯の着信音に嫌な予感しかしない年末です。

ようやく事が終息して打ち上げに参戦出来たのは午後2時を回っていました。

3Fの食堂では私たちを待つ間にひとりで先に打ち上がっていた社長が、
「わっしゃ腹いっぱいや、もう出来上がってしもたぞ」
と真っ赤な顔で連呼しています。

席に着くや否や姉と向き合い、胃にぶっこむように酒を飲み続けました。疲れた身体に染み渡る日本酒の味わいに、いついつまでも浸っていたい心とは裏腹に現実が私にプレッシャーを与えます。

旦那の実家は神社。数時間後にはそちらへと向かわねばならない身です。

そしてその前に今年はもう一つクリアしなければならない仕事が待っていました。お得意様が4時半にお酒を買いに来られることになっているのです。年末年始休みがないお客様は、どうしても31日のこの時間でしか調整がつかないとおっしゃいます。ご自身の目で見て買い物されるお客様で、もちろんそれはOKです。ただ、私にはダンナの実家に行かなければならないケツがあるので、これは姉に担当してもらうしかなかろうという流れになっていました。

ところがです。早々のうちに姉がこう言い出したのです。
「あたし、無理や。もう酔っ払ってしもたし。」
何んとたわけたことを言ってくれる姉でしょうか? 私はじき帰らなならんと知ってのこれです。
「何言うとれんて。あんたはこのあと寝るだけやろ? あたしこの後ダンナの実家に行かんなんが分かっとるやろ? しっかりしてや」
姉が言います。
「無理や。絶対に。」
「ダラやろ」
「ダラでもアホでも、もう無理」

相変わらず限界のバーが極端に低い姉です。時計を見れば3時。とっさに姉に提案しました。
「今、3時やし、4時30分まで寝たらどうや? 目覚ましかけて」
「えー、まだ飲み始めたばっかりなんに・・・」
とか何とか言いながらまんざらでもない様子でその場を後にした姉です。

さて、今度はさっきまでいたはずの社長がいません。待てど暮らせど戻ってこなかった社長は、無言のまま勝手に自宅に帰ってしまっていました。ずるくないですか? 黙ってバックレるなんて・・・。

帰らねばならん時間が迫ってきています。果たして姉は約束通り起きてくるのだろうか? 
やきもきする私に母がこう言い切りました。
「何が起きてくるかいね。絶対に起きてこんわいね。酔っ払った時のあのおっかしな顔しとったもん。無理無理、絶対無理。絶対に起きて来んわいね。む~り。」
あぁぁ、もはやあきらめの念しか湧いてこないお言葉、それ最初に言うて欲しかったよ、おっかさん。
もう覚悟せざるを得ない状況でした。とは言え、私だって立派な酔っ払いです。こうなりゃもう出たとこ勝負しかありません。

1Fに降りてみると誰もいないはずの冷蔵庫の扉が全開になって明かりが点いています。
(えっ、もしかしてコソ泥ですか?)酔った頭が思考回路に悪さをします。
「おい!誰だ~そこにいるのは、出てこい。そこにいるのはわかってるんだ、何者だ」
そう大声で叫んだよ~な記憶がかすかに残っています。
中からびっくり眼で現れたのは、センターの若手T君でした。

※センターとは、主に病院や老人ホームなど365日お休みのできないお客様を担当している部署です

「なんすか、そのテンション」
しまった!すっかり忘れていた、センターのメンバーがまだ残って仕事をしていたことを。
普段は存在感無し無しの空気のようなこの私が、大声を張り上げて威嚇するというキャラ崩壊にすっかり怯え切った様子のT君でした。 やっても~た( ゚Д゚)

話を戻しましょう。
母の予言通り姉は決して戻っては来ませんでした。職場放棄です。
ここで一声吠えてもいいですか?
あんだけ頼んだんに起きてこんって、責任感ちゅうもんはないがんか、ダラばばぁめ


これ、実際に注文を受けたメモ書き
、、、暴れてます

年明け、注文を書き留めた己の文字の暴れっぷりにどんな応対をしたのかが気にかかります。
酒臭い息で調子に乗っていたに違いない自分を、お客様が無かったことにしてくれはしないかと切に願う私です。