酒の失敗談・個性的すぎる女将の思考回路

酒の失敗談・個性的すぎる女将の思考回路

Feb 5, 2020

この春、金沢を離れる娘に「大好物のお寿司をお寿司屋さんでおなか一杯食べさせてあげたい」と、母から嬉しいお誘いを受けました。

母と姉、娘と私の女子会の会場は、実家で誕生日の度に出前を届けていただいているお店ではなく、ダンナの実家からすぐのお寿司屋さんへ初めて行ってみようということになりました。私が嫁いでから母が大晦日に必ずそのお店からダンナの実家へとお寿司を届けてくれているので、美味しさは実証済みです。

一足先に着いた娘と私ですが、さすがに回らないお寿司屋さんに入るのは敷居が高くて緊張しました。個室へと通された私たちは、まずは女将からメニューのことで説明を受けることになります。

「ごめんね~、明日休みやからネタがもうあんまり無いがやわ。好きなもん注文されても出せんがやわ、ごめんね~。今日に限ってお客さんが次から次から来られてほとんどネタが切れてしもて何もないがやわ。」

着いたなりのショッキングな言葉でテンションは一気に急降下です。

「まずは、おすすめの7貫とか取って、そのあとに好きなもんをちょっと追加で言われたらどうかな~と思うがや。ほやけどその好きなもんもあるかどうやらはわからんけど。」

それならせめてそのおすすめとやらを先に注文しておいて母や姉が来るのを待とうと思った私です。

「それならおすすめの11貫を先にお願いしといていいですか」

女将の顔が一瞬にして曇ったのを私は見逃しませんでした。

「ん~、11貫かぁ。ん~、ま~、ちょっと多いがんないかな」

4人で11貫ってことは、一人3貫満たず、、、おいおいおい、そんなんじゃこの娘が発狂するぞ。寿司となればバキュームカーと化す娘のその表情は恐ろしくて見ることができませんでした。せっかくの壮行会がお通夜にでもなりそうな勢いでテンションはさらにダウンしていきます。

「そうですか、、、それならまずは9貫にしときます」

100歩譲って言った言葉でしたがまたしてもダメ出しです。

「ん~、9貫か。9貫でも多いがんないかなぁ」

4人で9貫ってことは、一人2貫、、、せっかく娘のために大好きなお寿司を腹いっぱい食べさせてあげたいと母が言ってくれているのにたった2貫の寿司ってどうなん?なぜ今日ここに来てしまったのかと後悔の念がにじんできました。求められている答えがどこにあるのか全く分かりませんでした。

ってか、そこまで客の方が遠慮しなければいけないってありですか?

「まあ、お母さんたちが来られてから注文されればいいわいね。そんなにに焦らんと。ただし食べたいもの食べれんかもしれんけど。」

(女将さん、ウチらが今日ここでお寿司を食べられることをどんだけ楽しみにしていたかご存知ですか?)そんな我々に「食べたいもの食べれんかもしれん」の連呼って残酷すぎます。

あぁ、寿司命の兄(社長)がもしこの場にいたなら確実にブチ切れるであろうと余計な妄想まで加わります。

かみ合わない会話が続く中、玄関が開いてようやく母と姉が到着したようです。


お通しです

外見とは裏腹に『噛み付きガメ』の異名を持つ母です。その地雷を踏めば母は苦情を言い続ける『オウム』と化すことでしょう(おとろしゃ、おとろしゃ)

なんとしてもここは穏便に、せっかくの日に母と娘のご機嫌だけは損ねたくないと思いました。なので女将から言われたことを事前に柔らか~く説明しておきました。

気を取り直して、まずは飲み物からの注文です。

母の[生ビール]、娘の[ジンジャーエール]ときてここで姉と私の[日本酒]を注文したわけですが、帰ってきた答えは「それはもうほとんどないわ」です。

またかよ!


サービスで出てきた
「大根のにぎり」

どんどん猫背になる自分を奮い立たせ別の銘柄のお酒を注文し直しました。酒の銘柄などもはやどうでも良い、二人で旅行に行くほど大の仲良しの母と娘が今日のこの瞬間を楽しんでくれればそれで・・・。

ここで先刻された「ネタがない」という説明が改めて母と姉に告げられました。だからおすすめのセットを取るしかなかろうと言われた姉が予想通りの返しをしました。

「それならおすすめの11貫をお願いします」

やっぱりそうなるよねっ。振り出しに戻ってしまいました。

しばしの間平行線の会話がなされた後、よくよく聞いてそのおすすめ11貫、9貫、7貫、5貫が一人分の数だということに気づかされました。それならそうと最初にそう言ってくれれば。こちらは11貫を4人でシェアするものと思い込んでいたわけです。「なら11貫は多いね」とようやく納得しました。


問題のおすすめ5貫ですが、
一つ食べちゃってます
追加したお寿司は色々あって
撮り忘れました

まずは一人5貫のおすすめから仕切り直しです。

「じゃあそれの他に追加で(姪の大好物の)トロと、(母の大好きな)梅貝と、ウニ、甘えびとイカをお願いします」

一番戸口に近い席に座っていた姉がみんなの意見をまとめて追加の5品を注文した時、女将がシラ~っとこう言ったのです。

「ん~、そうなるとお宅だけが15貫ってことになるね」

ぶちかまされた言葉の爆弾に姉は口を開けたまま放心しています。

つまり・・・


追加注文したネタの写メ発見
しました!

「みんなは5貫だけど、姉さん、あんただけが追加したからあんただけ15貫食うわけやね」

と言ったのです。これはおすすめ5貫+(追加5品×2貫セット)15貫の計算です。

確かにいかにも食いそうな体系の姉ではあります。ですが主役を差し置いて我だけ好き勝手食うてやろうなどというあさましい心は持っていないはずです。どこどこまでも話が読めない女将の思い込みで超身勝手な女に仕立て上げられた姉の哀れにツボりました。声を押し殺して笑おうとするのですがあまりのことに吹き出すわ、涙はこぼれるわ、もう制御不能状態です。

こちらがこれほどバカ受けしているというのに女将はそのことにはこれっぽっちも気づいていない様子で、その針穴のような視野の狭さが我々の笑いを増幅させました。一体どんな思考回路しとるんすか?


「茶碗蒸し」出汁が効いて
旨かった

出されたものはどれも文句のつけどころがないほど美味しく、まだまだ食べたいものだらけで未練はたっぷり残りましたが無理やり頼み込んだ『茶碗蒸し』以外の追加注文は断念せざるをえませんでした。ひとつひとつの注文が通るまでがあまりにも過酷過ぎます。

女将の思考回路が個性的すぎるのか?はたまた我々の方がおかしいのか?とにかく落ち着いたところで飲みなおそうと店を後にしたわけです。

この後、近くのバーでワインを傾けながら「お宅だけが15貫」のところを思い出しては爆笑し続けた4人です。

本当に楽しかったです。母に感謝、感謝です( ◠‿◠ )